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暁闇
第5章 終わらせる決意

「それで、先輩を好きに?」
「……そのときはまだ、いい同期に恵まれたな、ってぐらい」
「じゃあ――――」
「自覚したのはそのあと。
……会社の給湯室でね。お茶いれてたら、桜井くんも手伝いに来てくれて。そのとき。
あらためてお礼を言ったら、桜井くんが『どうにもならない想いって、あるから』って」
「……どうにもならない想い……」
「ん……中学のとき何があったかって話になるんだけど。
私、先生を好きになって。それがちょっとおおごとになっちゃったの」
さらりと続けられたその内容に、俺は少し驚いて、思わず彼女を見る。
「人気のある先生だったんだけど、そのあと先生は転任したから。それ、たぶん私のせいだし……だからその子がそういう言動に出る気持ちも分かるの。
……自業自得っていうのかな」
俺の視線を受け止めることなく、その横顔に自嘲気味な笑みを浮かべて彼女はそう続けた。

