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銀剣士の憂鬱
第18章 一緒に

サラはぼんやりと海を眺めていた。
あの後、運良く馬と巡りあったサラはがむしゃらに森を走り抜けた。
とにかく早くその森から離れたかった。
その後は魔物を退治して賞金を得ようという気が起こらず、ブラブラとあちこちの景色を見ながら過ごしていた。そのうちに持っていた金を使い果たし、馬も売り払った。
最初は自然の美しい景色をいろいろと見ていけば、気持ちが前向きになるかと思っていたけれど、結局あまり変わらなかった。
心にぽっかりと穴が空いてしまったようで、とにかく何もやる気が起こらなかった。
食料も無くなり、最後にたどり着いた海をぼんやりと眺めていた。
(もっと早くに気づけば良かった。
大体にしてあいつは普通じゃなかった。
意味が分からない奴だった。
でも...)
サラは何よりも自分がチェチェに向かって言った言葉に対して後悔していた。
「魔物なんかに...」
混乱していたとはいえ、サラは今まで一緒に旅をしてきたチェチェに対して差別的なことを口にしたのだ。
例え種別の違う生き物であったにしても、それは今までサラのことをブスだとかブサイクだとか言ってきた人達となんら変わらない気がしていた。
(結局、自分が傷ついたふりして、あいつのことを思いっきり傷つけた。
あいつはいつだって私に対して一生懸命に接してくれていたのに。
魔物だろうがなんだろうがチェチェはチェチェだった...
私のことをまっすぐに見ていてくれたチェチェだったのに...)
やがて日が沈もうとした頃、海に潜んでいた腹を空かせた魔物が人の気配に気がついた。
ゆっくりと海から這い上がり、獲物に狙いを定める...
サラはその気配に気づいたが動こうとはしなかった。
(もういい。
私はさんざん魔物を殺してきたんだ。
そんな最期でも悔いはない...)

