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オオカミ君のホンネ
第20章 変化


「…あ……」

さっき壁を殴ってそのままアパートを飛び出したから手が血まみれだ。
行く先行く先、人の視線が手に集中してる。

「…………痛ッ……」

そのとき、大きな暖かい手が俺の手を引いてベンチに座らされた。ふと見上げると、赤髪のイケメン。モデルじゃないかってぐらいの。
イケメンは俺を見て微笑んだ。
その微笑みは、天使みたいだった。

「…染詠。」

イケメンは俺の名前を呼んで軽く頬にキスをした。え…?なんで俺の名前知ってんだ?

そんな俺の心を見透かしたようにイケメンは言った。

「俺……穣だよ。」

……え…

…嘘だろ…穣は栗色の天パにクリクリの大きな瞳、俺より小さな背だぞ!?

それに比べてこのイケメンは赤髪に切れ長の男らしい瞳、175はある長身だぞ?
いくらなんでも信じられない。
どうみたって接点が…

「……髪、染めてアイロン掛けた。それ以外は夏休み中に変わった。背も伸びて、目も細くなった。でも声は変わんなかった…」

声…

本当に穣にそっくり…

目とか穣の親父にそっくりだ。

現実に追いつけずに固まる俺を抱きしめて、穣は

「ずっと……好きだった。小さな頃から。」

と呟いた。

この優しい声…穣だ。


「……穣…」


その後穣は、今朝ミキと会ったときのことを話してくれた。



「ずっと俺、レイプされちゃうかもしれないけど大丈夫だから。心配しないで。」


そんな言葉、キレイサッパリ嘘だ。

穣を安心させるため。

穣は少し困ったような顔をしたけど、笑顔でわかれた。
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