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悪戯な思春期
第2章 重ねた王子様は微笑んで

 彼氏の定義を述べよ。

 年間行事を共に過ごす人。
 夏休みは海辺で砂遊びして、冬はクリスマスを寝ずに一緒にいる。
 原義は友達以上の男子友達。

 では問おう。

 友達を経ずにつき合ったらそれは彼氏と言えるのだろうか。
 ……痴漢と紙一重だ。


 翌日の昼私はぼんやりと下らない堂々巡りを繰り返していた。
(一昨日初めて話したのに……昨日キ……キスしたとか)
(軽い女だったってことだ)
(うるさい黙れ椎名蜜柑)
(蜜柑って……いっそ林檎って言っちゃえよ)
 レース越しに春の暖かい日差しが頬を撫でる。
 何度も通る影は、きっと昨日見た燕だろう。
(巣作りかぁ……微笑ましいよなぁ)
 リサイクルショップで千円出すと十円返ってきた四つ脚テーブルに頭を預ける。
 冷たいガラスの感触が気持ち良い。
 泡が閉じこめられたこのテーブルはお気に入りの一品だ。
 朝日には黄色く泡立ち、弾けるレモンシュカッシュみたいに光る。
 夏の真昼は青空を反射して、水面の様に揺れる。
 今は、優しい陽光を静かに反射して白く輝いている。
 知らぬ間に背後に近づく睡魔にうつらうつらした時だった。
 顔の側に置いていた深紅の携帯が震えた。
 耳をテーブルに押しつけていた私には地なり位に覚え、首が痛むくらい速く起き上がった。
 音の正体を見抜くと、溜め息を吐いて通話ボタンを押した。
「もみもみ~」
 この挨拶は一人しかいない。
「美伊奈……それなんかエロいから止めてって」
 受話器から美伊奈のアイドルボイスが伝わる。
「あらぁ? そんなこと連想するなんてヤらしいなぁ~。まさか、西ともう?」
「恥ずかしがりながらそんなこと言うな!……っなんもなかったよ。軽井沢に行っただけ」
「なにマジ? デートじゃん」
 直に突っ込まれ、携帯を落としそうになる。耳が熱いのがすぐにわかった。
「…デートらしいよ?」
 瞬間向こう側から笑いが爆発した。
 美伊奈は涙目になって文字通り爆笑してるようだ。
「なに笑ってんの」
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