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悪戯な思春期
第2章 重ねた王子様は微笑んで
何かムカついて、私は不機嫌な声を上げる。
だが、美伊奈はお構いなしに二分間は楽しみ続けた。
「キャーハハハ、可愛すぎる。その頃に戻りたぁい」
明らかに馬鹿にしている口調だ。
逆にスッキリして、私はテーブルにまた優雅にもたれかかる。
「でね……」
「なになに?」
「キス、した」
ほんの少しの間が空いて、嵐の前の静けさが訪れて、極大の笑いの風が巻き起こった。
息が詰まらないか心配になるが、長年の付き合いでもう慣れた。
美伊奈の笑いの暴走は待つ以外ないのだ。
「ふっ……ハハ、ひんっ……それで?」
(それで?)
「電車の中だったんだけど……キスされて、ずっと頭をこう……抱かれて」
「ハーッ!」
有名人ばりの引き笑いで答えた美伊奈に私はただ黙る。
きっと初々しくて仕方ないのだろう。
「じゃあねー……一週間以内に貞操を奪われるね」
(てい……何?)
戸惑う私を置いて、美伊奈は恋の先輩さながら喋りまくる。
「西がまさかデート誘ってキス奪うとはねー。目は付けてたんだけど、雰囲気ダークだから夜とか豹変しそうじゃない? あたしか弱い乙女なんだし、やっぱり草食系男子で十分なんだよね。まさか椎名が初の相手が学年一のルックスとは……捕まえときなさいよ! 今度あたしの彼氏六人連れてダブルデートしよっか」
「美伊奈……それダブルデートって言わない」
「なぁに? 浮かない声ばっか。何があったか美伊奈に話してご覧」
(ばれてしまう……アホなテンションだったくせに、鋭い)
私は彼氏の定義について話した。
日曜日の午前中を丸々使ったそれは、それはもう濃厚で三十分も説明に費やした。
「うん、うんもうわかった」
耐えきれなくなった美伊奈が制止する。
「初めてだとそう思ったりするよねー。しかも相手は瑠衣スマイルの持ち主……かなり一筋縄じゃいかない」
「本当にね」
(昨日は何度そのスマイルに翻弄されたことか……)