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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「あたしを抱いてくれますか? あたしの身も心も貰ってくれますか?
愛し合う…こ、恋人として――」
照れてしまって噛んでしまったが、ナツはそれについて触れなかった。
「君の心までをも僕が貰えるのなら、それは……この上ない幸せ。それが叶うというのなら、ああ!! 僕は……今まで生きてきてよかった!」
ああ、この笑顔に胸がきゅぅぅんと苦しくなる。
だけどそれを知られたくないあたしは、欲情にまるでそんな余裕はないくせに冗談めいて笑う。
「ふふふ、おおげさね」
「本心だよ」
あたし達は熱い視線を絡み合わせたまま、くすくすと笑い合い、そして顔から笑みを消していく。
顔に色濃く残るのは、互いの渇望。
あれほど肌を重ねたというのに、互いの肌と体温に飢えている。
それなのに動けない。
言葉で互いの欲を確認しているのに、動き出せない。
胸に抱えるのは内から焼き尽くすかのような業火――。
その衝動を互いにちろちろと蕩けた眼差しの奥に見せて、こんなに互いが欲しいと、悩ましい息と切ない顔で求めているというのに。
本能の行為に切り出せないのは、恋だと自認したがゆえの臆病さと、夢ではないのだろうかという猜疑心によるものなのかもしれない。
絶望したくないから、確認したくなる。
「好きだ」
額同士をこつんとぶつけて、ナツが睦言のように甘い声で言った。
薄く開かれた目。縁取る長い睫毛がふるふると震えている。
間近で動くナツの唇を、艶めかしく感じてしまったあたしは赤面してしまう。
「本当に抱いていいの? 今さらかもしれないけれど、君が大事だから、無理はさせたくない。君の心を貰えただけで、僕は満足だから」
あたしは、喉の奥から、欲望にひりついた熱を声にする。
「心ごとナツに抱かれたいの。強く繋がりたい。好きだから……」
「……もう一度言って」
囁き程度にしか響かない、互いの掠れた声。
情欲の昂ぶりを伝える、唇同士の距離が狭まっている。
「ナツが好き……。抱いて欲しいの、ナツを身体と心で感じたい」
こくんと、唾が飲み込まれたのはどちらのものか。
ちゅっ。
啄むようなキスをしかけたのはナツが先だった。