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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
まただ。
また彼は、傷ついた顔をする――。
冷たい風が、再び薔薇と男の前髪と、罪悪感に満ちたあたしの心を静かに揺らしていく。
「どうして、王亡き後も、この白薔薇が息づいていると思いますか?」
前髪で隠れていた男の顔が、再び露わになった。
透明感溢れる、綺麗に整った顔が。
その顔はちょっと前までに見せていた"悲哀"ではなく、自信に満ちたような余裕めいたものに変っていた。短期間の変化に、見ているあたしが当惑する。……また、振り回される。
「あなたが手入れを?」
「さすがに俺には、そこまで堂々としたいことをする時間も立場にもいません」
「じゃあ庭師か誰か?」
「ここは王妃すら知り得ぬ、王の隠れ家のようなもの。ここを知り得るのは、王とあなたと俺のみ。そして今は、俺とあなただけだ」
「だったら、やはりあなたは……」
「知りません。初めてあなたとお会いしました。美姫と名高い噂の姫君」
褒め言葉を放ちながらも、それを否定するような無表情な壁を作り、それ以上は彼の領域に踏み込ませまいとする。
この男が掴めない、距離が遠すぎて。
「まどろっこしいのは嫌いよ」
口を尖らせたあたしに、男は鉄壁なまでの無表情さを崩してふっと笑った。なんでそれで表情が崩れるのかわからないが、そこから漏れ出た予想外な甘い表情に、あたしの胸は疼いてしまった。
うわ、なに。なにこの、きゅんっていうの。
不可解なときめきがなにか恥ずかしくて、ひとり焦るあたしは、それを隠すように、つんとした表情維持に努める羽目になってしまった。
くすりと男が笑う。あたしはつんとしたまま目を泳がせる。