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甘いだけの嘘ならいらない
第4章 月が溶ける朝


♡ ♡ ♡


「……本当に此処でいいのか?家の方まで行って、少し離れたとこで降ろしてもいいけど?」


翔に車で駅まで送ってもらって、車を降りてお礼を言うと、翔は気遣わしげにもう一度言ってくれた。
でも、あたしは微笑んで頭を振る。


「ううん。英士くんはたぶん、駅まで来てくれるから…」

「そうか。じゃ、また月曜。会社で」

「うん。ありがとう」


頭を下げて、にこりと笑う。


車の中でスマホを確認すると、英士くんからの着信は履歴を埋め尽くして、留守電にも何件も残されてた。


届いていたメッセージは29件、日付が変わる頃に始まって、夜中3時を過ぎてからはかなり頻繁に送られていた。


初めは軽い内容だったものが、徐々にあたしの身を案ずるものになり、最後の方はあたしが事件にでも巻き込まれたんじゃないかと、心配で気が触れそうだと、痛切なものに変わっていった。


『理紗、おねがい。無事なら1秒でも早く電話して欲しい。声を聞かせて。俺、理紗のこと心配で、どうにかなる…』


最後のメッセージは、英士くんがどれだけ真剣にあたしを想ってくれているかを物語っていて、あたしの犯した罪の重さを深く詰っているように思えた。


自分でしておいて悔やんで、こんなにも愛されてることを知って、涙が溢れそうになって、鼻がつんと痛む。


あたしは英士くんに心配してもらうような資格ないよ、って。


泣き出したくなる気持ちを飲み込んで、翔には笑顔でさよならを告げた。


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