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唇に媚薬
第2章 不器用プリンス

……切れたぞ、おい。
電波とかの問題じゃなく、明らかに言い捨てて切ったよな?


「…………」


え、なに。
俺?
これ、俺がかけるの?
キスした理由を言う為に?

そりゃこっちが説明する側に間違いはねぇけど
こんな方法があるわけ?


「なんなんだよあの女……」


髪をガシガシ揺らして、着歴を呼び起こす。
10秒以上焦らされて


『……蘭、です』


知ってるっつーの。


「お前、酔ってんのか?」

『酔ってません。
ごめん、き、緊張の余り……』

「まだ会社?
俺の話、ちゃんと聞ける状態?」

『パジャマに着替えて、ベッドに座ってる……』

「…………」


……だてに幼なじみを続けてきたわけじゃない。
電話の向こうで、携帯片手に丸まってる姿が想像できる。

飾らない、すましていない “ 本来の蘭 ”
俺の口から、安堵の溜息が漏れた。
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