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第1章 お嬢様は孤独

「千夜、もういいわ」

千夜の日程の報告を遮った彩月は玄関の前に用意された車に乗り込んだ。

運転手の隣には千夜も乗る。

彩月が行くのは授業料がかなり高い超金持ち学校だ。

其処には生徒が不自由にない様

通常の学校では有り得ない校則がある。

まず、生徒には必ず執事がついている事

そして生徒の安全を守る為

厳重な警備の下、生徒は一日を過ごす事になる。

彩月は此な窮屈な学校があまり好きではなかった。

学校の前に止まる黒い車

其の扉を開けるイケメン執事

そして中から出て来るのは

才色兼備の学校一のお嬢様、彩月

毎度の事ながら誰もが其の光景に釘付けになる。

「相変わらず、お嬢様は人気がありますね」

「嫌味のつもり？」

「いいえ。仕えている主人が此れ程までに人気があるのなら

私も執事として鼻が高いです。」

馬鹿みたいに並べられた御託

無自覚ならまだしも

此の執事は其の言葉が彩月の気に障るという事を知っていて敢えて口にするのだから性質が悪い。

「上條様」

１人の女子が近づいて来た。

電機会社の令嬢だ。

付き合っていても特に利益にはならないが

いざという時の為に僅かな人脈は欲しい。

些細なものでも使える時が来るかもしれないからだ。

「あの、此れ受け取って下さい」

有名ブランドのお店のチョコレート

甘い物はあまり好きではない。

其れに物で人のご機嫌を取る人間は彩月の一番嫌いなタイプだ。

「ごめんなさい、甘い物は好きでは無いの」

悲しそうな女子生徒の顔を彩月は睨みつけた。

「さようなら」