この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
あの店に彼がいるそうです
第12章 どんな手でも使いますよ
 ビリビリと空気が震える。
 ふーっふーっと巧の荒い息だけが響く。
「……話を聞け」
「誰なん」
「俺達はホストだ」
「鵜亥さんのなんなん」
「関係者かな」
「オレを連れ戻しに来たん?」
「違う」
「じゃあっ、なにしにっっ、ここに来たんや!」
 戒が力任せに座らせる。
 凍り付いた空気の中で、変わらず穏やかな声で篠田が言った。
「君と同い年くらいのうちのホストがな、騙されて鵜亥の組織に捕まっている」
「え?」
「そいつは、君の代わりとして鵜亥にこれから愛玩具にされるんだろう」
 下唇を噛み締めて巧が聞き入る。
「俺はそいつを助けたい。だが、打つ手が今のところない。唯一頼れるのが、鵜亥が溺愛していたという君だけなんだ」
 カチカチと秒針の音が空気を打つ。
 膝の上で拳を強く握る巧が、震える声で問う。
「あんたは……オレをそいつの代わりに売りたいんか」
「違う。必ず約束する。君に危害は加えない。絶対に守る。だが、交渉に付き合って欲しい。一芝居打たないとならないが」
「なんて名前?」
「あ?」
「そのホスト、なんて名前?」
 やっと誰を指しているか気づき、名前を告げる。
「瑞希、か……今そいつは、鵜亥さんの元におるんやね」
「ああ」
「あの人の元に……」
 戒が肩を抱いても、巧は怯え続けていた。
「ご、めんなあ? 戒……まだ、オレあかん」
「気にするな」
「名前、聞いただけで……っ、怖くてな」
 そんな二人の様子をただ黙って篠田は見つめた。
 何かに怯える、か。
 そんな態度、あいつは見せたことも無かったから、つい新鮮に感じてしまうな。
 雅。
 この青年と同じような境遇だっただろうに。
 いや、それより酷かっただろうに。
 すべてに無関心といった顔して、俺を見上げてたな。
「オレが行けば、助かるんやね……瑞希は」
「必ず」
「戒、行っても……ええかな」
「巧……」
「馬鹿かもしれんけど、オレな、ずうっと後ろめたかってん。あの時残してきた他の男の子たちのこと。あの後海外に売られたかもしれん。殺されたかもしれん。オレだけ生き延びて戒と幸せに暮らしとる。それでええんかって……だから、だから今オレが誰か助けられるんやったら」
「無理はするなよ」
 ぐっと肩の手に力が籠る。
 巧は答えるように戒に顔を向けた。
 そしてぎこちなく笑う。
「初のお客のお願い聞かん奥様、嫌やろ?」
/342ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ