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あの店に彼がいるそうです
第14章 夢から覚めました
目が覚めたら香ばしい匂いがして
光が溢れるリビングに行ったら類沢さんが煙草を片手にソファに座って
「おはよう、瑞希」
そう笑って、俺を手招いて
豪勢な朝食を二人で食べて
食後は類沢さんこだわりの紅茶を二杯ずつゆっくり味わって
「そろそろ準備しようか」
そう言うまで穏やかに
時が止まったみたいに
ゆっくり
ゆっくり
そんな空気に包まれて
いつの間にかそれが幸せになって
だから
そこにいたかった
借金がどうとかじゃなくて
俺は
類沢さんの
隣にいたかったんだ
目を開ける。
覗き込んでくる影。
ここで俺がいつも勢いよく起き上がるから、額をぶつけあうんだ。
「お……はよう、ございます」
たどたどしく言う。
そしたら、類沢さんが返してくれる。
しかし、耳に届いたのは違う声。
「随分辛い目に遭ったな」
苦々しい笑み。
「……篠田、チーフ」