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あの店に彼がいるそうです
第4章 超絶マッハでヤバい状況です
類沢が突入して五分も経たないうちだ。
物音に反応したアカが立ち上がる。
「仕事中だった」
「なんかあったんかな」
裏口を睨む。
伸ばした手につい声が出た。
「ナニ?」
「いや、勝手に入っていいのか」
「ああー……」
ガシガシと首を掻く。
それから振り向いて手を上げる。
また締められると思って首を塞ぐ。
しかしその手はイヤホンを包んだ。
なにびびってんの、という雰囲気を漂わせて。
俺も耳に押し当てる。
中の状況はこれ頼りだ。
モードは2つ。
全員の会話を拾うのと、ある人物、類沢の声のみ拾う2つ。
アカも俺も無言で目配せし、類沢に切り替えた。
「……秋倉ってあの秋倉?」
「どの?」
「ほら。あ、みぃずきが知るわけないか」
「なにが?」
「この辺の土地買い占め出してる証券会社の取締役の……」
ガタン。
両方の耳に届いた扉の音。
アカの顔が凍てついてゆく。
「紫……織さん」
止める間もなくアカは裏口に飛び込んだ。
ナイフを構えて。
店内の時が止まる。
全員が紅乃木を見つめていた。
秋倉の首にナイフを突きつけた紅乃木を。
「類沢さん」
グイッと皮膚に押しつける。
秋倉の顔は飄々としていた。
「殺していいよね」
「駄目だ」
「なんで?」
類沢は一瞬口ごもった。
それは、自分が実行したいことだったから。
そう言いそうになるほど。
「一人でも警察に捕まらせたくはない」
「……流石はトップ」
アカは嗤いながら言う。
ナイフは離さない。
男たちが二人を囲んだ。
「じゃあさ、腐ったことしか云えない口だけでも削っていい?」
紫織を一瞥して力を込める。
「礼儀知らずのガキが」
低い声が響く。
秋倉の言葉に微かに眉を上げる。
「なんつった」
「お前みたいな糞ガキがホストとはな。シエラも狙われる訳だ」
「秋倉さんっ」
部下が叫ぶ。
殺されかかっている時にする挑発じゃない。
しかし類沢は知っていた。
この人間の気性を。
こういう場面だからこそ、相手の心に突き入る機会に変えてしまう狡猾さを。
「この太くて醜い首、半分にしたげよっか」
「余裕かましてる場合か?」
アカが表情を変え、後ろを見ようとした瞬間だった。
ガンッ。
男の一人が鈍器を振り下ろした。
物音に反応したアカが立ち上がる。
「仕事中だった」
「なんかあったんかな」
裏口を睨む。
伸ばした手につい声が出た。
「ナニ?」
「いや、勝手に入っていいのか」
「ああー……」
ガシガシと首を掻く。
それから振り向いて手を上げる。
また締められると思って首を塞ぐ。
しかしその手はイヤホンを包んだ。
なにびびってんの、という雰囲気を漂わせて。
俺も耳に押し当てる。
中の状況はこれ頼りだ。
モードは2つ。
全員の会話を拾うのと、ある人物、類沢の声のみ拾う2つ。
アカも俺も無言で目配せし、類沢に切り替えた。
「……秋倉ってあの秋倉?」
「どの?」
「ほら。あ、みぃずきが知るわけないか」
「なにが?」
「この辺の土地買い占め出してる証券会社の取締役の……」
ガタン。
両方の耳に届いた扉の音。
アカの顔が凍てついてゆく。
「紫……織さん」
止める間もなくアカは裏口に飛び込んだ。
ナイフを構えて。
店内の時が止まる。
全員が紅乃木を見つめていた。
秋倉の首にナイフを突きつけた紅乃木を。
「類沢さん」
グイッと皮膚に押しつける。
秋倉の顔は飄々としていた。
「殺していいよね」
「駄目だ」
「なんで?」
類沢は一瞬口ごもった。
それは、自分が実行したいことだったから。
そう言いそうになるほど。
「一人でも警察に捕まらせたくはない」
「……流石はトップ」
アカは嗤いながら言う。
ナイフは離さない。
男たちが二人を囲んだ。
「じゃあさ、腐ったことしか云えない口だけでも削っていい?」
紫織を一瞥して力を込める。
「礼儀知らずのガキが」
低い声が響く。
秋倉の言葉に微かに眉を上げる。
「なんつった」
「お前みたいな糞ガキがホストとはな。シエラも狙われる訳だ」
「秋倉さんっ」
部下が叫ぶ。
殺されかかっている時にする挑発じゃない。
しかし類沢は知っていた。
この人間の気性を。
こういう場面だからこそ、相手の心に突き入る機会に変えてしまう狡猾さを。
「この太くて醜い首、半分にしたげよっか」
「余裕かましてる場合か?」
アカが表情を変え、後ろを見ようとした瞬間だった。
ガンッ。
男の一人が鈍器を振り下ろした。