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あの店に彼がいるそうです
第4章 超絶マッハでヤバい状況です
「ハーイ。秋倉おじさん久しぶり? 老けたし太ったね。直視出来ない」
「空斗、落ち着け。キャッスルのホスト、如月紫苑だ」
 瑞希が声を上げる。
 ああ、そうだった。
 言ってなかった。
「今回、貴方の店に狙いをつけたのは僕らだけではなかったんですよ。支部は先ほど全て差し押さえました。もう貴方に残ったのはそこにいる役立たずの部下だけですね」
 六人が類沢の後ろに立つ。
 周りのホスト達は、その異様な圧力に身震いした。
 きっと今、歌舞伎町の頂点の七人がここにいる。

 いや、もう一人……

「ふざけるな。こんな騒ぎにしてただで済むとでも」
「ただで済まないのはお前だけだ」
 低い声が類沢の後ろから響く。
 誰もが口をきくのを忘れた。
 炎に照らされた影。
「この街を荒らしやがった糞野郎? 今更なにが出来るんだ」
 その横顔が闇夜に浮かぶ。
「し……篠田」
 いつものように白いスーツに身を包み、煙草を片手に現れる。
 だが、穏やかさは一切ない。
 純粋な怒り。
 瑞希は以前脅されたことを思い出した。
 秋倉に近づき、ネクタイに指を這わせる。
「なあ、お前は昔から知ってるぞ。男児誘拐犯の真。まさか名義屋とつるんでるとはな」
 類沢は片眉を上げた。
 また、隠していたな。
 裏に秋倉がいることを。
 春哉?
 ネクタイに絡んだ指がグイッとそれを引く。
「がッ」
 太い首に食い込み、秋倉の顔がさらに紅くなる。
 篠田は無表情で煙草を近づけた。
 彼の眼に。
「やめろ……」
「本当はな、雅に全部任せたかったんだ。お前を半殺しにでもしてくれるんじゃないかと思って。でも雅はお前なんかよりずっと利口だった。暴力沙汰は禁止。こんな単純なルールさえ守れない奴がいるってのに」
 類沢は声なく笑う。
 昔破ってなにをされたかよく覚えていたから。
「熱い? 熱いよなぁ、網膜が焼けたらそりゃ痛いだろう。痛くて眼なんかいらなくなるんじゃないか?」
 秋倉はそれでも誇りがあるんだろう。
 目を閉じなかった。
 篠田が手を下ろす。
「ま、暴力はやめろという俺が暴力をしてもな」
 秋倉はゼイゼイと息を吐いた。
 店が轟音を立てる。
「さて、類沢。かつての飼い主に判決を下してやれ」
 類沢は頷き、足を踏み出した。
 飼い主、ね。
 この醜い男がね。
 血走った目を見下ろす。
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