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あの店に彼がいるそうです
第5章 殺す勇気もない癖に
なるほどね。
類沢は耳の上に電気が走るのを感じた。
「雅さんがこの……」
液体の入った注射器を持ち上げる。
「薬を打ってくれればいいんです」
玲の腕の中で瑞希が何かを呻く。
すぐに口を塞がれたが。
「大事な仲間の、いえ……大事な瑞希の代わりにね」
篠田が制する前に類沢が前に出る。
「どういう意味?」
「そのままですよ。今の慰みは彼なんでしょ。ああ、わかってます。でもそれは事実ですよね」
「いつから僕にそんな口を効くようになったのかな、聖」
「雅」
小声の警告。
わかっている。
挑発に乗るわけにはいかないことは。
「あと一分差し上げます。一分でこの男の命を貴方が決めてください? もっとも、答えなんて一つですよね」
瑞希が足で床を蹴る。
「ぅぁあッッ、んんッ」
「黙らせて?」
聖の一言で玲が腹に拳を入れた。
「あぐっ」
がくりと瑞希が落ちる。
「お前……」
「下がってて春哉。さっさとその薬よこしなよ」
「雅っ」
聖が薄く微笑む。
意味を汲み取り、類沢はポケットに手を突っ込んで歩き出した。
無言の手招きに答えて。
「いくらお前でも」
「そうだね」
後ろに置いていかれた篠田が頭を押さえる。
「任せてって約束したでしょ」
聖から注射器を受け取り、彼は囁いた。
「条件付きでな」
「死なないから大丈夫」
「いくらなんでも、そんな怪しい薬など……」
篠田は口を閉じた。
緩慢に向けられた類沢の顔を見て。
全身がゾワゾワと鳥肌立った。
蒼い眼に捕らわれ、惹き付けられたかと思えば弾き返される。
一瞬が随分と長い。
濃すぎる怒りに言葉すら発せられない。
「大丈夫だから」
恐ろしい男。
そんな風に育てた覚えはないのにな。
背中を見ながら篠田は首を掻く。
「……っくそ」
歌舞伎町一のチーフでも、止められないホストがいる。
類沢は耳の上に電気が走るのを感じた。
「雅さんがこの……」
液体の入った注射器を持ち上げる。
「薬を打ってくれればいいんです」
玲の腕の中で瑞希が何かを呻く。
すぐに口を塞がれたが。
「大事な仲間の、いえ……大事な瑞希の代わりにね」
篠田が制する前に類沢が前に出る。
「どういう意味?」
「そのままですよ。今の慰みは彼なんでしょ。ああ、わかってます。でもそれは事実ですよね」
「いつから僕にそんな口を効くようになったのかな、聖」
「雅」
小声の警告。
わかっている。
挑発に乗るわけにはいかないことは。
「あと一分差し上げます。一分でこの男の命を貴方が決めてください? もっとも、答えなんて一つですよね」
瑞希が足で床を蹴る。
「ぅぁあッッ、んんッ」
「黙らせて?」
聖の一言で玲が腹に拳を入れた。
「あぐっ」
がくりと瑞希が落ちる。
「お前……」
「下がってて春哉。さっさとその薬よこしなよ」
「雅っ」
聖が薄く微笑む。
意味を汲み取り、類沢はポケットに手を突っ込んで歩き出した。
無言の手招きに答えて。
「いくらお前でも」
「そうだね」
後ろに置いていかれた篠田が頭を押さえる。
「任せてって約束したでしょ」
聖から注射器を受け取り、彼は囁いた。
「条件付きでな」
「死なないから大丈夫」
「いくらなんでも、そんな怪しい薬など……」
篠田は口を閉じた。
緩慢に向けられた類沢の顔を見て。
全身がゾワゾワと鳥肌立った。
蒼い眼に捕らわれ、惹き付けられたかと思えば弾き返される。
一瞬が随分と長い。
濃すぎる怒りに言葉すら発せられない。
「大丈夫だから」
恐ろしい男。
そんな風に育てた覚えはないのにな。
背中を見ながら篠田は首を掻く。
「……っくそ」
歌舞伎町一のチーフでも、止められないホストがいる。