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贄姫
第1章 壱
「……っ」
「それくらい、当然だろ。
生涯、護ってやるんだから。
それに、贄姫の契約は、確かそうだったはずだ。
お前は、随分と美味いらしい」
「怖がるな。そいつの言うことを、聞け…」
ごほ、と周が咳き込み、
信じられないような血を吐き出した。
「やだ、周、死んじゃう…!」
「あれは確実に死ぬな。
人間なんてもろいもんだ。
こんくらいの妖たちに手こずるわ
命は短いわ、気弱だわ…。
のくせに、命を大切にしない奴も多い。
お前たちこそ、俺らの不思議を駆り立てるものはない」
男が舌なめずりをすると
あまりの美しさに
椿の背中に寒気が走った。
「つ…」
周はそう呟いたきり、
動きが止まった。
「え… やだ、死んでないでしょうね!?」
盾を形成していた周の式が
もう一体、塵のように吹き飛ばされた。
「やだ、周! あまねっ!」
「あいつ、お陀仏も近いぞ?」
あまりにも呑気な推察に
椿は腹が立って男の顔に唾を吐きつけた」
瞬時に、男の黒かった瞳が真っ赤に染まる。
「てめぇ…」
「いいわよ」
怒りに恐ろしい顔つきになった男に対して
椿ははっきりとそう言い切った。
「いいわよ。
あんたとの契約、飲むわ」
「ふん、ずいぶんところっと気持ちが変わるもんだな」
そのかわり、と椿は息を荒く吐き出した。