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贄姫
第1章 壱
「…言うつもりはなかった。
誰もが、お前の呪いを解くために、必死に動いていたからだ。
だから、言わなくて済んでいれば、それは呪いが解けることを意味していたんだ」
「じゃあ、今、私にそれを伝えたってことは…。
呪いが、解けなかったってことなのね?」
「ああ。
お前の呪いを解きたかった」
周の真剣な声に
椿は不信感の方がでてきた。
「なにそれ、みんなでずっとあたしを騙してたわけ?
知らない方がいいって、みんな、あたしに何も言ってくれなかったわけ?」
怒りでそのような言葉を吐くと
周が静かに「そうだ」と言い切る。
それを聞いて椿の頭に登っていた血が逆流してくる。
「な…によ、それ…」
「呪いさえなければ、お前は普通の高校生活を送れるんだ。
だからみんな頑張った。
だけど、タイムリミットの17歳までに、解けなかった。
だから、次の一手に移るしかないんだ」
「ちょっと、ごめん。
頭が追いつかない」
「お前を呪いから解放することはできなかった。
だから、妖から襲われないようにするしかない。
そのために、お前に守護者をつける。
代々、贄姫はそうやって身を護ってきた。
身を護るその代価は、お前の命だ。
今日、その儀式をするぞ」
椿は言葉を失った。
「なにそれ…なんで、なんで」
「必ず、何かを得るためには代価が必要なんだ。
お前の命を護ったものには、それ相応の代価が必要だろ。
俺たちだったら、人間だから金でもなんでもいい。
だけど、あっちの世界の住人ではそうはいかない。
命のやり取りが基本だからな」