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忘れられない指
第17章 終わるための罪
めずらしく凌空がいない週末。

土曜の夜にシークレットのカウンターには私一人だけが座っている。

「今夜は凌空くんはどうしたの?」

「昨日から大阪に出張なの。週末なのにね。
 でもたまには一人でのんびりするのもいいよ」

マスターは静かに笑った。
落ち着きのある目元にしわをたたえて。

「そうだね・・
 でもうれしいなぁ、この店のお客さん同士が出会って結婚する。
 自分もそうだからさ、なんか幸せのおすそ分けをできたみたいでよけいにうれしいんだ」

「そっか・・恵子さんもここの常連だったんだもんね?
 恋のキューピットって、看板に書き加えたら?」

私の発想にマスターは声をあげて笑った。

「キューピットか・・
 今だから言うけどね、咲子ちゃんが彼らと友達になった時からこうなるかもなぁって
 思ってたんだよ」

「え~?ほんとに?」

「ほんとだよ、でも・・相手はちょっと予想と違ったけど」

マスターは手元に視線を落とした。
拭いたばかりのグラスをまた布巾で拭こうとして、やめた。
手が落ち着きのなさを表していた。

「誰だと思ってたの?」
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