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忘れられない指
第17章 終わるための罪
カウベルが鳴る。
振り返ると、入ってきたのは孝明だった。
「こんばんは、あれ、咲ちゃん一人?」
うん、と返事をするのが精いっぱいだった。
噂をすれば影!とおどけてみせる余裕があったらどんなにか気が楽だったろう。
「いらっしゃい、ビールでいいの?」
何事もなかったように、慎介さんは孝明に笑顔を向ける。
私は2人の顔から目をそむけてしまった。
「今夜はバーボンにするよ。まずは水割りにしておくかな」
「おや、めずらしい!バーボン水割りね」
「あ、マスター、私には・・えっと、なんだっけ、オレンジをテキーラで割った・・」
「え?テキーラサンライズ?大丈夫?口当たりいいから飲みすぎないでよ」
孝明の、いつもと違う注文に私も一緒に反応した。
心の中がざわめきたつ。
いつもと違う夜に・・
自ら染めてしまうかもしれない・・・