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忘れられない指
第5章 思いもよらぬ・・
 
アパートの隣の部屋のドアが閉まる音で目が覚めた。

今度は朝になっていた。
カーテン越しに晴れだという事がわかる。
明るい陽射しが目にまぶしかった。


孝明は・・いなかった。

いつの間に帰ったのだろう。
3時過ぎ、再び愛し合った後、またミノムシになったところまでは覚えている。
きっと夜が明けてから帰ったのかもしれない。

ハッとしてドアを見る。
鍵・・かけてあるだろうか。
飛び起きて玄関に行くと、スニーカーの側に鈴のついたキーが落ちていた。

・・そうか、鍵かけて郵便受けから・・

凌空の家でもやっていた、あれだろう。
ゆっくりとしゃがみこみ、キーを拾う。
鈴を鳴らして、昨夜の出来事が夢じゃないことを確認する。
孝明が間違いなくここにいて、今まで味わったことのない快感を私に与えてくれた。
特に・・
彼の指・・あんなにもなめらかに動いて、確実につかんで、私の肉にくい込んだ・・
あの指・・・

私は久しぶりに幸せな気分を味わった。
でも・・孝明は寂しそうだった。

一線を越えたことで孝明との関係に変化が訪れるのだろうか。
私を特別な存在にしてくれるのだろうか。そして私は・・
彼を・・愛するようになるのだろうか・・・


下着と部屋着を身につけてからカーテンをあける。
初夏の輝く陽射しにむかって、大きく体を伸ばした。

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