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先生、早く縛って
第35章 大人の階段

あの悪夢のような出来事からあっと言う間に一ヶ月が過ぎて……明日はもう終業式だ。

私は、蕾が色づき始めた川沿いの桜並木を石塚さんと二人で歩いていた。沙也加ちゃんの家に向っているのだ。

あれから私は数日学校を休んだだけで、普通に通学していた。先生の判断で私を家に連れて行ってくれたおかげで、私があの一件に係わったと知っている人はほとんどいなかった。私に残ったのは心の傷だけ……でもそれもこの一ヶ月でほんの少しだけど癒えてきていた。

先生とはあれから会っていない。
私はあの日……自分の身体が汚れてしまったことが許せなくて、先生のことを拒絶してしまったことを後悔し始めていた。

でも、何かのクスリのせいだとはいえあんな人とあんなことを……そう思うとどうしても自分が許せなかった。ハッキリ覚えていない部分もあったけど……あれは先生への裏切りだったと今も感じている。

だけど先生への想いが消せる訳じゃない……それに先生が言ってくれた〝傷を癒すこと〟の意味が私は少しわかりかけて来ていた。

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