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Love adventure
第21章 決心
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 あの夜、智也に幾度も求められ、烈しく抱かれたほなみは、無意識のうちに西本祐樹の名前を呟いてしまったらしい。
 智也に組み敷かれ、静かに追求された。

「今……誰かの名前を呼んだだろ?」
「……っ」

 頭の中が真っ白になり唇が震える。

「様子がおかしいと思ったが……他の男の事を考えていたから……なのか?」

 智也は、妻の手首を物凄い力でつかんだ。

「……何とか言ってくれよ」

 ほなみの耳元で聞こえるのは、彼に似つかわしくない、悲壮な響きの弱々しい声だ。
 このままただ時間が過ぎ、彼がこの問題を忘れてくれるのを待つくらいしか、やり過ごす方法を思いつけない。
 ふたりだけの寝室に時計の秒針がやけに大きく響く中、ほなみは頭の中をフル回転させ考えていた。

(正直に事を暴露したところで、誰も幸せにならない)

 ――今、何とかこの場を凌がなければ。

 唐突に、あぐりが酔った時の恒例の長い説教を思い出した。

『女はね、生まれた時から女優なの。
 本物の女優になるか、女優になる事を捨ててまっ正直に生きるか、それは自分が選ぶのよ。
 "私は正直に生きる"……それも良いかも知れないわよ。
 でもさあ~!それで何か良い事あんの?上手くやる為に演じる事が人生の総てよ。
 良いとか悪いとかの問題じゃなくて~心の中は誰にも縛れないの。自分自身でさえもねっ!
 甘い夢を見て、憎い敵と戦って、表では涼しい風に振る舞うって、女にしか出来ない事よ?
 ……昨日まで何もなくても、今日も変わらない保証は無いんだからね?
 いわば毎日は冒険よっ!
 恋や愛なくしては、人生送れないわよ――!
 そう!私達は、
"Love adventure"
 なのよ――!』


 今まで五十回以上は聞いたであろう言葉を頭の中で繰り返し、ほなみは気持ちを固めた。



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