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Love adventure
第3章 不思議な疼き
 ライヴハウスの中は、演出のスモークで白い霧が漂っている。
 ほなみ達は中央少し後ろ側の一段高くなった場所を陣取った。

「つかまるバーもあるし見やすくていい場所じゃん!よかったね!」

 あぐりは満足そうだ。

「うん。良く見えるね」

 ほなみは、イメージしていたよりもさらにステージが近い事に驚く。 
 さすがに手を伸ばしても届かないが、この距離なら充分メンバーの動きや表情が見えるだろう。
 ステージ中央にグランドピアノが置いてある。
 あの場所に、彼が、来るーー想像しただけで緊張してしまう。

(どうしてこんな風にドキドキするのーー
 ーー「付き合ってくれないか」と、高校生の時に智也に言われた時、これほどまでに心臓が激しく鳴っていたけ?
 初めて智也と唇を重ねた時や、初めて身体を重ねた時にも、ここまで心が浮き立っていたーー?)

 ライブハウスの中が急に真っ暗になり、観客達がどよめき、誰からともなく手拍子が起こる。 
 ステージが鮮やかにライトアップされ、メンバーが次々と現れ観客に手を振る度に歓声が響いた。
 ドラマー、ギタリスト、ベーシストがステージに立ち、演奏を始めた。
 狂喜する観客の手拍子がいっそうリズミカルに鳴る。


 ーーあと、一人。

 中央のピアノに来るべき人物を、皆が待っている。
 ほなみも手拍子をしながらステージを見つめた。 
 パンパンというその音よりも、鼓動の方が大きな音を立てているような気がする。


「……ねえ、あぐり」
「うんっ?」
「今更、私が、人を好きになったら、変……かな?」
「えっ?何!?聞こえない」

 ひときわまばゆい照明がピアノを照らしたかと思うと、ステージの上手からスーツ姿の彼が颯爽と現れ、女の子達が絶叫した。
 白い光に包まれた彼の姿にほなみは胸を激しくときめかせる。

 "西君"は、ピアノの前で王子さまのような恭しい所作で客席に向かってお辞儀をし、ピアノに向かい鍵盤をたたく。
 彼が唄い始めたのは、ほなみが先程、家で偶然耳にした曲――



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