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初花
第3章 玻璃
龍は、いまも 目を逸らした。

出逢った頃のように、触れただけで
怯えて 震えることは なくなったとはいえ…
その心は いまだ固く閉じている。



華奢な 姿をみると
連夜 その身を求めることは憚られて、

ただ 穏やかに過ごす夜も 多くあるのだが

そのようなときも 呼びかけなければ
自ら わたしに 瞳を向けることはしない。


「龍。 そなたの目には 私が鬼のように
映っているのであろうな…」


滅多に吐かぬ弱音に ふりむいて、
驚きを露わにした 琥珀の瞳が 瞬く。


「鬼よりは…お優しいとおもいます。」


素直な応えに、思わず 笑う。


「鬼よりは…か。」


唇のなかを 舌で探りながら
脚のあわいを なぞり、
そして 茎の悦い処を 擦りあげれば

喘ぐ吐息は たしかに
歓びの色のはず。


だが、それ以上のものは
なにも混ざらない。



花と 薬を漬けた油で
既に抱かれるため 夕刻までに仕込まれた
後孔を 更に解し、突き入れ

胸狂おしく 掻き抱いても
その瞳は、空を覗くため 天井を切り抜き
瓦に埋め込まれた 玻璃の窓を
一心に見つめている。


月も 星も見えぬ、雨の夜だというのに。

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