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王子の甘い罠
第1章 王
海外事業部での私の担当はフランス。
月の半分近くはフランスにいるかもしれない。
小さい頃から、父の転勤でフランスに長くいたために
会話や読み書きは苦労しない。

そんな私のひそかな趣味が、官能小説を読むことなんだけど。
フランスに行ったときに大量に買い込んでくる。
官能小説はフランス語で読むに限る。
表現だって、日本語よりエロチックだし
何より、中身を見られても誰にも気づかれないってところがいい。

先月、大きな取引が終わって
少し仕事が落ち着いてしばらくフランスに行ってない。
買いためた官能小説も読み終わった。

そんなときはいつもお気に入りの1冊を読むことにしてる。

もう何回読んだか分からないその本は
大好きなページは折り癖がついて
すぐに開けるし、官能的な部分は少し過激だけど
電車の中で読んでいても
隣の人が覗き込んできても、官能部分だとは分からないのがいい。

で、問題はここから。

その本をどうやらなくしたらしい。

あれ?と気づいた時には、手元になかった。
どこに置いたんだろう。

別に私の名前が書いてあるわけではないから
出てこないかもしれない。

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