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rena's world story★a.n.r.r.y
第13章 お土産

「まぁ、上司が出てきたのはいいキッカケだ」

「………!」

「無視続けるわけにもいかねぇし
どこかで会わないと収拾つかねぇって思ってたから」


盛りつけた料理を、ひとつ残らず食べ終わった葵が
箸を置いてお皿を重ね始めた。


「さっき言った通り、一夜限りの “ 子守 ” で終わり。
来週の土曜が最初で最後」

「………」

「別に媚売る必要もその気もねぇからな。
どーせこの冷血な口調にイラつくかビビるかで、お嬢様の目も覚めるだろ」


立ち上がった葵が近付いてきて、私の前に右手を差し出す。
……無言で手を添えると、きゅっと包まれた。


「つまんねぇ話はもういいだろ。
蘭の話が聞きたい」

「……うん」

「片付けは後で俺がやるから」




葵の手はいつも冷たいけど、優しくて温かい人だって私は知ってる。
葵が終わりって言うんだから、何も心配しなくていいって分かってる。



……だけど
葵は気付いていない。


上司命令とはいえ、他の女と食事することに
激しく動揺して不安で仕方のない私の心にも


冷血で口調が悪い程度では
女の恋心を諦めさせる理由にはならないってことも……



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