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好きにさせて
第2章 二人
「いや、もうちょい
早よう来たかったんやけど
仕事立て込んでてな。
せやけど今日は繁盛してるやんか」


小夜は
カウンターと
奥に狭い小上がりが
ふた部屋あるだけの店

今日は
カウンターはガラガラやけど
奥の部屋は
どちらも客がいるようやった


「今日は金曜日だから。
前に来てくれたの日曜日だったでしょ?
日曜日はいつもガラガラなのよ(笑)」


「そぉかー。
ほな日曜日狙って来るわ。
俺、交代勤務やから
夜勤以外やったら
夜はわりと自由やねん」


「期待するよ?」


そう言う時の茜の顔は
ほんまに子供の頃を思い出す


イタズラで
ちょっと上から目線で
ませてて
けど
すこーし照れてるみたいに
笑うんや

その笑顔は
つい出てしまった
飾らない
嘘のない幼い笑顔みたいで
その茜の顔が
俺は好きやった


「なに?
何か顔についてる?」


あかんあかん

つい見入ってたのか
茜は手で顔を隠すような仕草をした


「いや、変わってないなーと思って」


「変わってるよー。
あんまり見ないで欲しいくらい(笑)
久しぶりに会うなら10年前
ううん、せめて5年前に
会いたかったなー。
その頃は若くて綺麗だったのよ?」


「おかしなこと言うなぁ」


「ん?」


「今でもベッピンさんやで」


そう言うと
茜はちょっと
はにかんで笑った


「お世辞うまくなったのね」


「まぁな(笑)」


「あ、奥のお客さん呼んでるから
行ってくるね。
おでん、ゆっくり食べてて」


「おぅ」
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