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好きにさせて
第12章 嘘


茜が風呂に入ると

俺は
冷たいビールで
頭を冷やした

和む会話で
まるで
あの日に戻ったような
そんな気持ちになった自分に
喝を入れるためや


淡い期待をして
またショックを受けるんは
自分

とにかく俺は
遅くとも
茜が眠る頃には
出かけないと…


それにしても

なんで
茜は小夜に寝泊まりしてんねや


好きな男と
ほんまに
うまいこといってんのか?


そういえば

そんな男とは
別れてしまえ

とか、
えらい偉そうなこと
言うてしもたけど
茜、怒ってへんやろうか…


俺は茜が好きやいうことを
全部話したせいで
なんでも
茜に言えるように
なってもうてるな…と思った


しばらくして
茜は風呂から出てきて
「お腹が空いた」
と言って
コンビニの弁当を食べ始めた


俺は
ソファに寝転がり
茜は
そのソファの前に
ちょこんと座って
テーブルに向かう


細く華奢な肩に
濡れた髪が
かかっていた


「髪、濡れてんで」

「うん」

「風邪ひかへんか?」

「大丈夫。
今、お腹空いてて
食べられそうだから
髪は後で…」


俺が
乾かしたろか?

そう言って
茜を背中から
抱きしめられたらええのに…


「ごちそうさま」


「え?」


お腹が空いたと言うてたのに
茜は少し箸をつけただけで
すぐに箸を置いてしまった


「茜、具合悪いんか?
胃薬でも飲むか?」


心配になった俺は
薬を出してやろうと
立ち上がると


「大丈夫、多分。
食べられるかなーと思ったけど
気持ち悪くなっちゃった(苦笑)」


茜はそう言って
笑ってみせた


「なんや
つわりみたいやなぁ(笑)」


え?


つわり?
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