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好きにさせて
第5章 部屋

茜はまだ寒いのか
パーカーのファスナーを
しっかりと締め
膝を抱えて座っていた


「長い間
彼女いないの?」


「せやな」


「モテそうなのに」


「モテへんよ。
それに、歳とると
条件でアウトなったりすんねん」


「条件?」


「兄弟おらんのはモテへんらしいわ。
この歳やと結婚が前提になるから
しゃあないねんけどな。
そんなんで付き合う前から
戦線離脱や」


俺はいわゆる
一人っ子なんや


「…そうなんだ…
彼女、欲しくない?」


「欲しいなぁ。
一人は寂しいし
正直、女の子抱きしめたなるわ」


ほんまは
女の子やのうて
お前を抱きしめたいんやけどな


「その気持ち…」


「ん?」



「わかる」


茜は
ちょっと照れながら
そう言うと
俺に酒を注いだ


「ぎゅってされたいとか
言うやつか?」


「うん」


そのくらい
いくらでもしたるのに


「俺はそんなんだけと
ちゃうけどな(笑)」


「男だもんね」


「女やって
そう思う時もあるやろ」




「ん〜…答えにくいな(笑)

でも…」



そりゃ答えにくいやろう

けど

俺と茜の
この微妙な関係が
答えにくいことを
答えてしまう関係で

恋人には言えず
友達にも言いにくい話を
その頃
俺たちはするようになっていた




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