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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
そんなある日、東京から相沢圭司が、私を連れ戻すためにやって来た。

「静香さん。気晴らしに海でも行きませんか?」

「海って…車は?相沢は新幹線とタクシーで来たんでしょ?さっきタクシーが庭先に入っ来たの見てたの。」

「車は車庫にありますよ。山本さんが整備に出して点検しているし、洗車もしてあるから、すぐに使えます。」

「あぁ、シャッターが閉まっていたから、解らなかった。あのオジサンが乗るような車でしょ?格好悪くて、恥ずかしいわ。それに中はオジサン臭いし…。」

「ははは…、そう言われちゃうと返す言葉がありませんね。こういう所では、ああいう車でないと使えないんですよ。静香さんが乗りたいような、スポーツタイプの車は、ちょっと無理かな?」

「へぇ〜っ…相沢にもできないことがあるんだ?父のためなら何でもしてるじゃない。」

「困ったな…私も人間ですから、できないことはたくさんありますよ。」

「わ・か・り・ま・し・た。もう三日も部屋にいて、退屈してたの。じゃあ、海に連れて行って。」

「どんな風景の海がいいですか?砂浜、磯、断崖絶壁、港…いろいろありますよ。」

「景色のいいところに連れて行って。」

「じゃあ、すぐに行きましょう。お着替えをなさってください。私は下で車を出して待っていますから。それから、お布団は山本さんの奥様が今日取り替えるそうですから、お召し物を混ぜないでおいてください。」

敷きっぱなしの懸け布団の上に乱れたまま置かれていた、私のパジャマを見てそう言った。
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