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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
想いを寄せる相沢圭司がすぐそこにいるのに、私はまったくの篭の鳥で、話を聞いてもらうことも、聞くこともできない。

そんなもどかしさに、ますます苛立って、相沢を困らせたい。だけど優しくして欲しい。という倒錯した考え方しかできなくなっていた。

(相沢圭司に逢いたい!逢いに行こう!キスだけじゃ嫌!抱いてほしい!)

私の募る想いが一点に集中した。

私は靴下を履き、携帯のメモに記録しておいた、本宅内部から警備を解除する暗証番号を見て、玄関前の廊下にあるパネルの扉を開けて、入力した。すぐに赤点滅から緑点灯に変わった。これで玄関の鍵を内側から開けても警備会社に通報はいかない。

離れの予備鍵が本宅のキーボックスにあるのを知っていたから、それを取り出して、握りしめ、静かに母屋の玄関を自分の身体の幅だけ開けた。

足は靴下だけにして、音を出さないようにした。庭には用心深く、防犯用の砂利が敷き詰めてあったから…。

僅か数十秒が何十分にも感じられた。

私は忍び足で、靴下だけで庭先の約20メートルを横断し、離れの玄関に辿り着いた。その時、パッとセンサーライトが反応して私の姿を浮かび上がらせた。

私は思わずしゃがみ込んだ。しかし、中で反応する気配はない。きっと相沢圭司は2階に居て気付かないのだ。

私はまるで泥棒のようだった。

相沢圭司を想う心と、相沢圭司はどのように驚くだろう?私をどうするだろう?そんな幼稚な悪戯心が私を動かしていた。

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