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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第10章 目撃
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「加賀谷。
お前、また海外出張断ったんだって?」
月曜日。
バッグの中に資料を入れて、デスクから立ち上がろうとすると
同じ企画部の先輩が、溜息をつきながら遼くんに声をかけた。
「部長が寛大だからいいものの。
デザイナーつったってサラリーマンなんだから、少しは会社の指示に従えよ」
「…………」
「しかも今回はフィンランドだぜ?
仕事とはいえタダで行けるってのに、断る意味が分からねぇ」
そう言いながら、先輩が益々深い息を吐くと
「その寛大な部長に、さっきみっちり叱られてきましたよ」
斜め前の席で、パソコンから目を逸らさずに遼くんが笑った。
「若い奴に譲りますって言ったら、いい加減にしろって」
「そりゃ怒るさ。
つーか、お前だって若い方に入るだろうが」
「来年三十路ですよ」
「充分若けぇよ、ボケ」
遼くんよりひとまわり年上の先輩は、やれやれといった感じで苦笑した。
「ったく。
奥さんの束縛も、ここまでくると感心するな」