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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第10章 目撃
「もしもし! お疲れ様です!」
『あら、蓮見ちゃん』
企画部直通電話にかけると、ツーコールで先輩が出た。
『どうしたの? まだ○○木工?』
「あの、か、加賀谷さんに内線回していただけますか?」
『はいはーい。
加賀谷さんは……ってあれ、ホワイトボードに外出って書いてあるなぁ』
外出!?
もう、こんな時に限って……てゆーか私に頼みたい仕事があるって言ってたのに!
いいや、とにかく先輩に……
『さっきまでいた気がしたんだけどね。
なにか急用?』
「先輩、実は……っ」
『……うん? どうした?』
「…………」
………その時
携帯を持つ私の右手
ゴツゴツした別の手に掴まれて、耳から離された。
前方に伸びる私の影に、後ろからもうひとつの影が重なっている。
「……営業車が目に入ったから、急いで立ち去ったつもりだったんだけど」
「…………」
「戻ってきて正解だったな」
ゾクリとする、冷たくて低い声。
携帯を取り上げられたので、ゆっくりと振り返ると
「……邪魔しないでくれる?」
芹澤さんは私を見下ろして、不気味な笑みを浮かべた。