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第3章 ８年めの片思い

“ 何の為にあんなに高い学費を払ったと思ってるのよ！ ”


………大学を卒業してから耳がタコになる程言われ続けている、親からのセリフ。

そう……私は特別才能があったわけでもないのに

通称５美大と呼ばれる有名美術大学のひとつに、まぐれで合格したはいいものの

不況の煽りを受けて、結局就職活動は惨敗に終わった。


華の美大生とはいえ、デザイナーやクリエイターなどの専門職に就けるのは極一部に過ぎず

ほとんどの学生達は、デザインとは離れた社会に身を投じているのが現実だ。


「……そんな中で、私はラッキーな方よね……」


ここは都内にある、インテリア関連の会社本部。

北欧を中心とした家具や、インテリア小物全般の輸入販売を行っていて

直営店とライセンスショップは、全国各所に点在している。

法人事業も多く手掛けていて、国内のインテリア業界では最大手。

週３勤務のパート社員とはいえ、この会社に入れたのは奇跡としか言いようがない。