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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
「両親、元気?」
そう聞きながら
2つに分けた花束を持って、遼くんがお墓の小階段を上る。
「うん、相変わらず。
今ジェノバ辺りにいるって、昨日メール来た」
「またイタリア行ってんのか」
「今回は巡ってるよ。
5カ国周遊の、地中海クルーズだって」
強風によって散乱した花を1本、ユキが手に取った。
お供えされてから日が経っていないようで、まだ枯れていない。
「義兄さんから言ってやってよ。
息子を置いて、旅行ばかりするなって」
「お前も一緒に行けばいいだろ」
「ん~、俺はまだ無理みたい。
親を空港に送りに行っただけで……震えたし」
角型の花立てに、新しい花を供えると
ユキの言葉を聞いて、遼くんはふっと笑った。
「頑張って克服しろよ。
俺と同じで治らなくなるぞ」
「………!」
「出張断り過ぎて、普通ならクビだ。
四次元ポケットでもありゃ、タケ○プターで飛んで行けるんだけどな」
……治らなくなる?
俺と、同じ……?
遼くんの言葉を聞いて
ユキも切なそうに、小さく微笑んだ。