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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
* * *
「……早乙女くん?」
夕方の6時。
空間デザイン科の研究室。
教授が出て行ってから、5分も経たないうちに
入れ替わるようにして、助手の竹中さんが戻って来た。
「1人で何してるの?
学生がここに無断で入っちゃダメでしょ!」
窓の外から降り注ぐ、赤い夕陽を見つめていた俺は
プリプリした声で近付いてくる竹中さんの方へ、デスクの上に頭を乗せたまま振り向いた。
「勝手に侵入したわけじゃないよ」
隣りのデスクに書類を置いた彼女を見上げて、ニッコリ笑ってみせる。
「じぃさんがコーヒー飲んでけっていうからさ」
「~~爺さん言うな!
名誉教授を何だと思って…」
「はい、これ」
「………!」
「あんたに渡すように頼まれた。
あと、先に居酒屋に行ってるから戸締り宜しくって伝言も」
教授から預かった研究室の鍵を、彼女のデスクの上に落とすと
エプロンを外して、竹中さんは大きく溜息を漏らした。