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退魔風紀 ヨミ ~恥獄の学園~
第1章 ヘイワード国際学園の怪
 退魔風紀――それは、学生退魔師たちによる自治組織である。

 大金を払ってプロの退魔師に魔を祓ってもらうことのできぬ学生を救うことを目的とする。詠はその一員として、日本各地の学園からの依頼に応じ、魔の風紀を粛清するのだ。

 今日もまた、彼女は任務を帯びて新しい学園を訪れていた。

 ヘイワード国際学園。海外の子女が通うインターナショナルスクールだ。学園の敷地内に一歩足を踏み入れればまるで外国のような雰囲気である。

 昼間、見学を装って下見に訪れたときには青い目や金髪の学生たちの中にあって詠の姿は目を引いたものだった。

 だが、今はもう真夜中になろうかという時間。園内に忍び込んだ詠は誰にも見とがめられることなく体育館へと向かっていた。依頼人である当校の生徒、ギニー・ディーンとの待ち合わせだった。

(……何故、こんな場所を指定してきたのかしら?)

 時間については理解できる。闇の眷属は夜を好む。しかし、体育倉庫とは?

 依頼が悪戯ではないことは、探知能力を持つ退魔風紀の仲間によって裏付けが取れている。倉庫に何か証拠がある、ということなのだろう。事実、近づくにつれ肌を刺すような魔の気配が強まっていく。

(これほどまでとは……これは相当手強い相手かもしれない)

 詠は眉を顰めた。外国人の生活空間に強力な魔が潜む、それは充分にあり得ることだった。何故なら、外国人は日本の魔を退ける仕草や言葉使いを身に着けていないためだ。

 日本人ならば幼い頃から自然と身についている普段の何気ない仕草や言葉が、そうとは知らなくても魔除けの作用を果たし、魔を寄せ付けることなく生活できるのだが、外国人はそういう意味ではまるで無防備ということになる。

(しかも、これほどの妖気を漂わせる程の魔だとすれば……)
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