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BLACK WOLF~crime~
第10章 最後ノ恋
黒埼さんが入院してるこの部屋…。
まるでスイートルームのような大きな1人部屋だ。
っていうか、普通の国立病院に何でこんな豪華な1人部屋があるのだろうか…?
まぁ、仕方ないか。
天下の黒埼グループの社長さんが入院してるとなるとこれくらい厳重にもなっちゃうかな?
お陰で私もこうしてお見舞いに来やすくなってるし。
「ところで、あの幼馴染みの坊やはどうなった?」
「え?あぁ、ハルちゃんですか?」
あの日、黒埼さんと一緒にハルちゃんもこの病院に担ぎ込まれて来た。
ハルちゃんの足の怪我。
それなりに応急処置はしたが、何日もあの状態で外気に晒され続けたせいで熱まで出て、そのうえ桜木さんに怪しげな薬まで飲まされてしまったが…。
「オペは成功して、今は一般病棟の大部屋にいます。足の怪我も何とか治りそうらしいです」
「…そうか」
「一応…、素人ですけど消毒して、バイ菌が入らないように包帯も巻いてましたから」
あの変な薬も、特に命に関わる代物ではなかったらしい。
胃や血液の検査もしたみたいだが異常はなかったようだ。
「あいつには悪いことをしたな…」
「え…?」
「俺のせいで巻き込んじまって…、あんな大怪我までさせて…」
「……黒埼さん?」
黒埼さんの口から出て来たのは、信じられない一言だった。
それは、ハルちゃんを労う言葉。
いつもは憎まれ口ばかり叩いて、ハルちゃんを嫌ってるような言い種だったのに
今、黒埼さん…
ハルちゃんに謝った…?
"悪いことをした"って、ハルちゃんに…?
「ど、どうしたんですか?黒埼さんらしくないですよ…」
いつもの黒埼さんと違う。
天井を見つめながら物思いに耽るような表情を浮かべている。