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BLACK WOLF~crime~
第4章 海ノ魚
「相沢さんにはちゃんと謝りたかったんだ。俺が変な事言っちゃったから仕事を辞めたのかと思って」
「え…っ!?まさか、そんな…」
確かに、黒埼さんの事を教えてくれたのは桜木さんだが、桜木さんが私に嫌がらせをしたわけじゃない。
寧ろ桜木さんは嫌がらせから私を守ってくれようとさえした人だ。
私こそ桜木さんに挨拶もせず呆気なく仕事を辞めてしてしまって、謝らなきゃいけないのはこっちなのに。
「桜木さんには感謝してます。私が仕事を辞めたのは…」
「皆まで言わなくてもわかるよ。大変だよね、有名人の恋人って」
桜木さんは気づいてくれてる。
私が仕事を辞めたのはエスカレートする嫌がらせに疲れ切ったからだと。
っていうか、黒埼さんは"有名人"とはまたちょっと違うような…。
「それで?が黒埼さんと喧嘩して飛び出しちゃったの?」
「あの、はい…まぁ…」
喧嘩、なんてものじゃない。
一方的に別れを告げた。
黒埼さんの中でどう処理をしたのかはわからないが、私と黒埼さんは終わった。
正確に言えば、終わるかも知れない。
けど、まだ確定してない事実を誰かに伝えるのは心苦しい。
それに、別れが訪れたとしても嫌がらせがすぐに収まるとも限らないし。
「…そんな格好でウロウロしてるって事は黒埼さんはまだ相沢さんの家に?」
「…多分」
忙しい黒埼さんの事だ。
もしかしたらもう仕事に行ってるのかも知れない。
でも、今はまだ帰れない。
帰ったらまた良いようにされるかも知れない。
「よし。さすがにこの寒空の中、アテもなくウロウロしてられないっしょ?家においで」
「………えっ!?」
な、何を、桜木さんっ!
突然の申し出に飲んでたコーヒーを吹き出しそうになってしまった。