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快楽の奴隷
第12章 『嗤う人形』
その作品の創作秘話を聞けば、嫉妬に狂うかもしれない。
花純はそれを怯えていた。


『嗤う人形』は一風変わった小説であった。

時系列は滅茶苦茶で過去に遡ったり、現在に戻ったりと忙しなく揺れる。
主人公の刹那的に生きる男と何処か脆さと危うさのあるヒロインの悲恋話だった。
衝撃的なのはそのヒロインというのが主人公より十歳年下の従妹ということであった。
従兄妹同士は結婚出来る血縁ではあるが、ラブストーリーの設定としては異例であるし、その年の差からヒロインが小学六年生のシーンさえあった。

その危うく妖しい世界観は現代であっても色褪せない衝撃を与えている。
それを十年も前に発表した時は世間を騒がせた。
映画化も囁かれていたが、作者が絶対に許可しないために実現しなかったと花純は聞いていた。


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