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第19章 快楽の奴隷

果てた身を抜き、高梨が横に寝転ぶと花純は顔をその胸に当てる。
高梨は腕を枕にさせてやり、指先を背中まで伸ばす。
背骨の膨らみを軽く撫でながら頭頂部にキスを落とした。

「高梨さんが死んだと聞いたとき、この世が終わったと思いました……」

少し恨みがましく囁く。

「随分遅かったんだな。俺は花純がいなくなった時点で同じことを思ったけどな」

嫌味を皮肉で返され、花純は頬を膨らませて愛する男を睨む。
高梨がキスをすると膨らんだ空気は音を立てて萎んだ。

「大丈夫……俺はきっと書ける……花純さえいてくれれば……きっとな」
「…………はい。期待して待ってます」

少し憂いを宿した表現の花純に、今一度高梨のキスが襲う。
激しさはなく、しかし舌は求めるように絡まった。
二人は目を閉じたままなのに、まるで互いが見えているかのように指を絡ませて繋いだ。

今だけは面倒なことをすべて忘れて、愛しあっていたい。
花純は高梨の手を強く握り締めていた。