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煌めきの粒子【超短編集】
第9章 教科書を覗き込む距離
席替えして
彼が右隣になった
嬉しいと思ってたのに
実際は
もどかしい距離だという事実に
すぐ、気付かされた
前や斜め前の席なら
自然と
彼を
視界に入れられるのに……
不自然過ぎて
右隣なんて
向けないよ……
近いはずなのに
遠くに感じる距離……
たまに
授業中
居眠りしてる時に
そっと横目で
見つめるだけ
ささやかな幸せの時間……
ある日の現国
『わりぃ。
教科書、見せて……』
隣からかけられた声
ガタガタと机が移動する音
ぴったりと狭められた距離……
鼓動が煩くて……
授業に集中、出来ない……
触れていないのに
近づいた
右腕が、熱い……
教科書の左側を持っていた手が
トン、トンと彼の指先でつつかれる
視線を落とすと
現国の先生のコミカルな似顔絵
吹き出しにはいつもの口癖
思わず
吹き出しそうになった私を
彼が覗き込み
唇に人差し指を当てる
心臓が…飛び出しそう……
分かった、と頷くと
満足そうに笑みを浮かべて
再び
教科書に
シャープペンを走らせる彼
他愛ない言葉
『現国、だりぃ』
『はら、へったぁー』
思わず
笑みが溢れる
『家、どこ?』
突然の質問に
慌てて彼を見つめる
トン、トンと
教科書を指差され
震える指先を必死に抑えて
ペンを走らせる
先生が
横を通り過ぎる時
見られないように
お互い
手で隠して……
秘密を共有してることに
ドキドキした……
昼休み終了間際
開けられた教室の扉を挟むように立っている
二人の学生
廊下側には隣のクラスの男の子
教室側は……彼だ
彼の友達は頭を下げ
その頭にパコッと軽くはたいて
教科書を渡した彼
『ぁ…』
現国の
教科書……
小さく呟いた私の声は
彼にはっきり届いてて……
罰が悪そうな顔をした後
真っ赤になって
俯いた……
教科書を覗き込む
距離まで
彼に近づけた
そんな、気がした……
彼が右隣になった
嬉しいと思ってたのに
実際は
もどかしい距離だという事実に
すぐ、気付かされた
前や斜め前の席なら
自然と
彼を
視界に入れられるのに……
不自然過ぎて
右隣なんて
向けないよ……
近いはずなのに
遠くに感じる距離……
たまに
授業中
居眠りしてる時に
そっと横目で
見つめるだけ
ささやかな幸せの時間……
ある日の現国
『わりぃ。
教科書、見せて……』
隣からかけられた声
ガタガタと机が移動する音
ぴったりと狭められた距離……
鼓動が煩くて……
授業に集中、出来ない……
触れていないのに
近づいた
右腕が、熱い……
教科書の左側を持っていた手が
トン、トンと彼の指先でつつかれる
視線を落とすと
現国の先生のコミカルな似顔絵
吹き出しにはいつもの口癖
思わず
吹き出しそうになった私を
彼が覗き込み
唇に人差し指を当てる
心臓が…飛び出しそう……
分かった、と頷くと
満足そうに笑みを浮かべて
再び
教科書に
シャープペンを走らせる彼
他愛ない言葉
『現国、だりぃ』
『はら、へったぁー』
思わず
笑みが溢れる
『家、どこ?』
突然の質問に
慌てて彼を見つめる
トン、トンと
教科書を指差され
震える指先を必死に抑えて
ペンを走らせる
先生が
横を通り過ぎる時
見られないように
お互い
手で隠して……
秘密を共有してることに
ドキドキした……
昼休み終了間際
開けられた教室の扉を挟むように立っている
二人の学生
廊下側には隣のクラスの男の子
教室側は……彼だ
彼の友達は頭を下げ
その頭にパコッと軽くはたいて
教科書を渡した彼
『ぁ…』
現国の
教科書……
小さく呟いた私の声は
彼にはっきり届いてて……
罰が悪そうな顔をした後
真っ赤になって
俯いた……
教科書を覗き込む
距離まで
彼に近づけた
そんな、気がした……