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~花の玉手匣~
第5章  蒼い牙に抱かれて

「――なるほど、話は分かった。他でもないそなたの願いだ。すぐに一筆書いてやろう」

陛下の言葉の最後の部分が耳に入って、ぼくは我に返った。

ふたりの会話内容はろくに聞いていなかったので詳しくは分からない。

けれど陛下が執務机に戻り、まっさらな料紙を取り出したのを見るに、証文か何かを翔龍が依頼し陛下が応じたといったところだろう。

「陛下のお手を煩わせ、申し訳ありません」

机の前に進み出た翔龍はうれしそうに陛下の手もとを見つめている。その目を見れば、翔龍が脳内で何を妄想しているのか、ぼくには分かる。

――そんないやらしい目で、ぼくの陛下を見つめるな!

ぼくはまたイライラしていた。

だから……


気づかなかったんだ。



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