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大きな瞳に映るのは
第11章 匂い
タンタンッ …
ローファーに履き替え校舎を出る。
いつも通りの帰り道だ。
きっと雪は美術部で絵を描いている頃だろう。
雪が美術部に専念し始めてから平日一緒にいることが少なくなった。
まあ私もひとりの時間が好きなので苦ではなかった。
( 春の匂いもそろそろ終わりだなぁ… )
そんなことをぼーっと考えながら歩いていると
物凄い勢いで自転車の止まる音がした。
キキーーーッ …
びっくりして後ろを振り返ると
髪を乱した遙が自転車にまたがって息を切らしていた。
『 はぁっ… はぁっ 』
「 あれ…? 麗先輩は…? 」
てっきり麗先輩と一緒なのかと思っていたので、遙の後ろをキョロキョロと見回したが彼女の姿はなかった。
『 はぁっ… おいてっ… きた… 』
かなりの勢いで自転車を漕いできたようで
必死に息を整えようとしていた。
「 おいてきた…?! どこに…?! 」
『 はっ… 』
私の様子を見て遙が吹き出し笑う。
『 家。あいつの家まで送ってきたの。』
「 あ…、なんだ、そういうことね… 」
ふう、と一息つくと
遙は自転車から降り、
牽きながら私の隣に並んだ。