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大きな瞳に映るのは
第11章 匂い
― 音夢 side ―
もうこの人が考えていることが
本当にわからなくなってきた …
『 ねぇ、腹減ってない? 』
「 お腹は空いたけど … 」
確かにお腹はぺこぺこだ。
いつも帰宅して家の晩御飯を食べるときにはピークを通り越している。
『 じゃあラーメン食いに行こうぜ! 』
あの少年みたいな表情を見せる。
もう仕方ないなぁ、という気になってしまう。
「 もー、わかったよ。 」
スマホを取り出し親に晩御飯はいらないと連絡だけ入れる。
『 乗るでしょ? 』
自転車に跨りながら遙が私に言う。
「 えっ… でも… 」
『 乗るでしょ? 』
再び遙が私に言う。
「 でも私二人乗りしたことない… 」
『 んなの余裕だって!座って俺につかまってればいいから 』
早くラーメンが食べたいのか
そわそわした様子で遙が言う。
本当に少年みたいだ。
ギィッ
『 服握るのはやめてね、うざいから 』
自転車に跨り後ろに座ると遙はそう言った。
「 えっ、じゃあどうしたらいいっ … ひぃっ 」
ギッ ギッ
言い終わらないうちに
遙は自転車を漕ぎだした。
『 なに、今の声っ 』
ぷっと吹き出し笑う遙。
私はどこを握ればいいかわからずとりあえず遙の横腹に軽く手を添えた。
ギュ … グイ
すると遙は自転車を漕ぎながら
わき腹に添えられた私の手を握ると
自分の腹あたりまでもっていった。
『 こうするの。 』
自然と私が遙に抱き着く形になる。
こんなの初めてだ。
ラーメンの話で吹っ飛んだように落ち着いた心臓が再び高鳴るのがわかる。
遙のいい匂いがする。
春の終わりを告げるような
生暖かい風を感じながら
遙の背中に額を当て身体をゆだねる。
遙の香を全身で味わうように瞳を閉じた。