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兄の狂気
第5章 愛 欲







「もと、める…?」


無言で頷いて、小さく口角を上げる哲平くん。


ねぇ…


どうしてそんなかっこいいの。


「瞳さんも求めてよ?俺を。俺の全てを」


その言葉に、あたしは無意識に口を開き、
言葉を発していた。


「…哲平くん。あたしも好きなの。
あたしを哲平くんのものに、…っ」


最後まで言い終える前に思いきり抱き締められ、
目を見開いて天井を見つめる。


がっしりした身体で抱き締められて、
感じるのは哲平くんの速い胸の鼓動。


ぱちぱちと瞬きを繰り返してると
後頭部に手をかけられて、
少し顔を上げた哲平くんの唇が重なった。


「…!…っん」


触れるだけのキス。


唇がときどき開くのに舌は入って来ないで、
ただ唇同士を重ねるだけのキスを続ける。


やがてあたしの下唇を甘噛みして離れた哲平くんは
身体を起こして何かを探してきょろきょろし始めた。


「…?」


涙を拭って哲平くんを見つめ、首を傾げてると。


「…っあー嘘だろ。うわー…やらかした。
何でこんな時に、…っクソ、マジかよ」


「…哲平くん?どうしたの?」


「…、…ゴム。ごめん。持ってきてないと思って」


…あぁ。


この人は、ちゃんと着けてくれる人なんだ。


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