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夢想姫の逃避録
第1章 泣かないで
いつだったかはあんまり覚えていない。
日にちを覚えるのは苦手だから。
それに、白馬の王子様なんて信じていなかった。
そもそも、誰からも愛されることのなかった、東雲緋奈という不幸な女の子を星の数程いる女の子の中から見つけ出して、そこから救い出してくれるような、そんな都合の良い王子様なんているわけがない。いないと思っていたから。
でもあの日の夜、白馬の王子様はちゃんと迎えに来てくれたんだ。
星の数程いる女の子の中から緋奈を見つけ出して、救い出す為に迎えに来てくれた。
白馬の王子様は確かにいた。
緋奈を助けに来てくれた。
暗いから姿なんて見えなかったけど、今でも覚えている。
手の温もりも、優しくてどこか安心する低い声も、囁いてくれた言葉も、そして、緋奈の頬に零れ落ちた涙の温度も。
「泣かないで……もう大丈夫だよ…今助けるから待ってて……?」