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緊縛
第1章 緊縛 1
 お金が欲しかった。

 八百五十円のアルバイトと実家からの仕送りで、私は細々と大学生活をするしかなかった。

 思い切って、風俗の面接を受けてみた。

 この不景気を反映してか、どこも、女の子は一杯。

 好きでもない男を相手にして一万円にもならないなんて。

 厚生費も高すぎるし、女の子が一杯では、どこか、いじめられそうで怖いのもあった。

 だけど、お金が欲しい。

 お金が欲しい理由は、これと言ってないけど、欲しい物を気軽に買えるようになりたい。

 これが、最後だと思い、思い切って、ソープランドに電話をしてみた。

 今のヘルスは本番が当たり前だと聞いて、働くならソープランドだと決めていた。

 ヘルスで、本番行為をしても六千円にもならない。

 もちろん手取りが高い店もあったが、私では、顔が地味だと露骨に嫌悪された。

 確かに、店先に飾られている女の子は、グラビアアイドル顔負けの美人ばかりだ。

 ここも駄目だろうか。

 思い切ってドアを開け、「面接お願いします」と言った。

 どこか、今までの風俗店と大きく違う。

 私が狙うのは、高級店ばかりだ。

 好きでもない男に抱かれて、一万円にもならないなら出会い系で高校生になりきったほうがいい。

 去年まで高校生だった。

 愛想のいい、品のいい受付けの方が、丁寧に来賓室に案内してくれた。

 緊張しながら店長を待っていると、お茶が運ばれてきた。

 今までこんなことなかった。

 どうしよう。

 場違いなところに来てしまったのだろうか。

 思わず大きく深呼吸をしていると、ドアがノックされた。

 急いで私は立ち上がり、頭を下げた。

 とても紳士的な感じがして、意味もなくときめいてしまう。

 立ち上がった私に、店長は、「お座りください」と、笑みを浮かべた。

「どうして君のような子が、ここで働きたいの?」

 なんだか、店長の顔をみているのが恥ずかしい。

 私は俯いて、「お金が欲しくて」と言った。

 店長はしばらく考え込むと、「緊縛してみない?」と聞いてきた。
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