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緊縛
第2章 緊縛 2
「でも、たくさんのひとに顔を見られるは」

「大丈夫。顔がわからないように目線を入れるから。サンプルムービーもないよ」

 店長は姉妹店であるSM店の話しをしだした。

「SMのお店と言うと、鞭だったり蝋燭だったりするイメージがあるだろう? でもそういうことが嫌いなお客様もいる。そこで、イメージ戦略を考えたんだ」

 私は思わず考え込んだ。

「でも、それじゃ、SMじゃない気がするのですが」

「緊縛美はとても美しいよ。君のようなタイプは縄がとても似合う」

「そんなこと見てわかるんですか」

「縄はエロスであって、イメージなんだ。君には失礼だけど少し薄幸そうな大人しい顔立ちの女性ほど、逆に艶かしいんだ」

 内心、薄幸そうと言われて私は面白くない。

 黙っていると店長は、「ごめん」と笑った。

 屈託のない爽やかな笑みがとても印象的だ。

 今まで面接してきた店長は、陰湿で、ベタベタ張り付くような値踏みする目が大嫌いだった。

「先ず契約料は十万円。一枚売れるごとに、定価の三十%を君に払うよ。購入していくお客様は、身分のある方ばかりだ。身分証明書も取ってある。君のイメージビデオを見て、気に入ったお客様が君を縛りに来るだろう。取り分はお店と折半。一度の縛りで九十分で、一万五千円。これにプレイがつけば、オプションごとに高くなるけれど、君は、お客様を目で楽しませてくれればいいから」

 本当に、そんな美味しい仕事があるのだろうか。

「とにかく騙されたと思って一度やってごらん」

 店長は契約書を取り出すと、「身分証明書は持ってきた?」と聞いてきた。

 私は保険証を取り出しながら、「縛りは誰がやるんですか?」と思い切って聞いてみた。

「縛りは難しいから、熟練した方になるよ。もし希望があれば、聞くよ。ロマンスグレーのようなひとがいいかな?」

 保険証を差し出しながら、私は、思い切って店長の顔をみた。

「コピー取らせて貰うね」

「はい」

 店長は気づいただろうか。

 しばらく待っていると、店長が保険証を返してくれた。
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