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第60章 歌姫の覚悟

　別れ際の翔大の言葉が甦る。

『食らい付け！』

　美名は、ガバッと立ち上がり、自分のバッグをひっくり返した。
　皆がいきなりの行動に唖然とする中、美名は手で荷物を掻き分け、白い封筒を取り出す。
　翔大がよこした手紙と小切手だ。
　美名は決意を固めた様に唇を結ぶ。
　ペコに向き直り、真っ直ぐに見ながら小切手を渡した。

｢ペコさん……ここに、これだけの金額の小切手があります｣

　ペコは眼鏡をずらして金額を二度見し、頷いた。
　美名は、皆の顔をひとりひとり見てゆっくり、しかしきっぱりと言った。

｢そのお金で……ポキノンさんのお力を借りて、そして皆の力を借りてやりたい事があるんです｣